「水素社会」という言葉があります。
これは、「水素エネルギーの活用を実現した社会」という意味です。
水素社会の実現は、エネルギー問題を解決するための、重要な取り組みのひとつです。
このコラムでは、水素社会の主役である「水素」と「水素を使ったエネルギー」について解説します。
水素とは
水素は、原子番号1番の、最も軽い元素です。
実は宇宙で最もたくさん存在する元素で、重さでは、宇宙全体の70%を占めています。
ただし、自然界には、水素の単体としてはほとんど存在しません。
水、化石燃料、有機化合物などの形で存在します。
水素はさまざまに活用される
水素は、工業原料としては、さまざまに活用されています。
一例を挙げると、
- 化学工業におけるアンモニア合成、メタノール合成、薬品への水素添加
- 金属工業における金属粉末の還元、プラズマ溶接、金属切断
- ガラス製造における雰囲気ガス
- 航空・宇宙産業におけるロケット燃料
- 自動車産業における燃料電池車、水素エンジン車燃料
その他、さまざまな用途があります。
水素エネルギーの作り方
水素は自然界にほとんど存在しないため、人為的に製造する必要があります。
水素の製造は、燃料や水にエネルギーを加えて作り出します。
以下に、大まかな分類を示します。
- 化石燃料に熱を加えてつくる・・天然ガス、LPG、ナフサ、石油などから
- バイオマスに熱を加えてつくる・・メタノールやメタンガスなどから
- 工業の副産物として得られる・・コークス炉などの副生ガスに多く含まれる
- 電気で水を分解してつくる・・火力のほか、風力・太陽光などの再生可能エネルギーから
副産物として得られるもの以外は、水素をつくるためにエネルギーを使います。
「二次エネルギー」としての水素エネルギー
間違えやすいのですが、水素エネルギーは、風力や太陽光などの「一次エネルギー」ではないです。
一次エネルギーとは、自然界に初めから存在するエネルギーです。
自然界に存在しない水素は、電気と同じように、他のエネルギーからつくられる「二次エネルギー」です。
ですから、水素エネルギーを使用する=エコロジー、という単純なものではないです。
「電気とは違った形で、蓄え、移動し、活用することができる便利なエネルギーの形」
ととらえる方が正しいと思います。
水素社会の実現に向けて課題は多々ありますが、これからも技術の開発とプラットホームの構築が進んでいく事でしょう。