ものづくり企業において、若い技術者の育成は重要な課題です。
しかし、若年層の離職率は30%超(大卒新人・入社後3年以内)であり、せっかく新人を雇用しても会社を離れてしまう率が決して低くない状況にあります。
厚生労働省HP:新規学卒者の離職状況(平成25年3月卒業者の状況)を公表します
離職率の低減は、国も重要な課題ととらえていますが、もちろん当事者たる企業や社員にとっても大きな課題です。
・早期離職の問題点
早期離職は、せっかく新入社員を採用した企業にとっては当然痛手ですが、離職者にとってもデメリットがあります。
元々第一希望ではなくモチベーションが続かなかった、業務内容や勤務地が希望と大きくずれていた、人間関係に問題があったなど、離職の決断をするには相応の理由があると思います。
しかし、転職することでしか解決できない問題というのは、そんなにありません。入社後に生じた問題は、社内で解決できるケースも多いです。
そして、そういった身の回りの問題は社会人生活で幾度となく生じるものなので、問題を自らの努力や工夫で(人への相談も含め)解決する経験が重要になります。
問題解決の努力をしないままに早々に離職をすると、その機会を失うことになります。
考え抜いた上での決断を、誰も否定することはできませんが、もう少し周囲の対応が適切であれば退職しなくて済んだ、というようなケースは、無くしていかなくてはなりません。
早期離職の原因はさまざまですが、その問題を「退職」という最終手段で解消しようとする前に、企業に所属している中で、解決することはできないでしょうか。
・社員の相談に対応していても解決しない
社員が悩み、上司、あるいは総務担当者へ相談するときには、すでに問題は深刻です。
職場での悩みは、容易には他人に相談しにくいです。特にその原因が会社にある場合には、会社には言いにくいものです。
つまり、会社側へ相談をした時点で、かなり事態は深刻ということになります。
そこで即座に真摯な対応を行い、小手先ではない誠実な対応をしない限り、その社員の悩みや不満は最終的には解消しないでしょう。
・早期離職を減らすには
打つべきは、問題が生じてからの対応ではなく、悩みや不満を深刻化させない取り組みです。
組織におけるコミュニケーションの中に、解決のヒントがあります。
日ごろから、社員が言いにくい悩みや不満を打ち明けられる人が身の回りに一人でもいれば、多くの問題は解決するでしょう。
そのような頼れる先輩社員が大勢いるような組織であれば、状況は大きく改善されます。また、離職率という指標だけでなく、社員の業務への満足度や、生産性についても改善されるでしょう。
頼れる先輩社員が生まれるには、人を育て、人をつなぐという組織文化を作り上げる必要があります。
人を育てる組織をつくるには、業務の達成度のみを尺度にするのではなく、人の努力や成長のプロセスを重視する管理者の姿勢が重要です。結果のみを見ていると、社員の中に、人を育てようという意識は生まれません。人を蹴落とそう、になります。
価値観も働き方も多様化している現代、昔ながらの熱血指導、オレオレ経営者の社風では社員はついてきません。
「会社の価値を高める社員を育てる会社」を目指すことが、離職率の改善への道だと思います。近道はありませんが、地道に改善していくことはできます。
なお、早急に問題を改善たいという場合には、プロジェクト型の組織改革が効果的です。その場合は、社内メンバーのみで推進するとあつれきを生みやすいため、第三者による助言や介入が有効になります。
・離職率改善による効果
若い社員の早期離職を抑制できれば、雇用・育成にかかるコストを大きく改善することができます。また社員のモチベーションや主体性が向上し、業績の向上に寄与します。
・まとめ
•早期離職は、離職者にとっても成長機会を損失するデメリットがある
•社員に相談された時点ですでに事態は深刻、そうなる前に対応する
•頼れる先輩が増えるためには、人の努力や成長を評価する組織風土に